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空の追憶の果て。 ―Wishes upon the sky―

自他共に認める永遠の146センチの創作・エンタメブログです。おもに小話や短編、その他創作などをのんびりと更新していくことになると思います。なお、小説類は転載・持ち帰り禁止です。

 

 

  考えの渦に巻き込まれそうになり、考えるのをやめてふと横を見た真は目を見開いた。

先ほどまで電話していたはずの莉央が、横に座ってじっと真の顔を見つめていたのだ。

 心なしか、口の端が若干上がっている。真っ直ぐな莉央の瞳が、真の瞳を捉えていた。

 

「う、わ」

 

―近い。近い近い!顔、近すぎやって…!

 

  実際は20センチほど離れているのだが、真正面からこれだけの距離でも真の顔が赤面するのには十分だった。

 が、赤面している真には全く気を留めず、めったにみない動揺した真の表情を見て莉央はくすくすと笑いだした。同時に離れて元に戻った距離に胸をなでおろしつつ、真は莉央に言う。

 

 

「…電話終わったんやったら声掛けてくれればええのに、」

「いや、だって真、唸りながら独り事言ってるから…いつ気づくかなーって」

「え、そんな聞こえてた…?」

「うん。なんか…20歳がどーのこーの、とかって唸ってたよ」

「うっわ…恥ずかし…」

「…?なんか悩み事?それにしてもさ、真って時々面白いよね」

「隆みたいに言わんといてや。俺天然とちゃうし」

「天然なところあると思うけど…。なんかちょっとさ、見てて可愛らしいというか」

 

  可愛らしい、という莉央の言葉に、真は少なからずいらだちを覚える。

一際人よりも男らしさにこだわっていたりする真は、男のプライドに傷をつけられたように感じたのであった。

 

「…莉央?」

「何?」

「…やっぱ何でもないわ…」

  しかし、莉央の真っ直ぐな瞳を見ると、真は行動を起こせなくなるのだった。

 

 

 

*                         *                          *

 

 

 

 

「真くん、今日空いてる?」

「…。…はい、空いてますよ」

 

   11月26日は、真が躊躇しているうちにあっという間に来てしまった。

 仕事後にスタッフに声をかけられ、真は見事な笑顔で返した。本当のところを言えば、メンバーなら素直に断ってもわかってくれると思うのだが、さすがに親しいわけでもないスタッフにそんなことを言うのは失礼というものだ。それに、せっかくのサプライズを台無しにしてしまう。

 といっても、長年付き合っているA2C専属スタッフには甘え上手で通るのだが。

どちらにしろ、この中のメンバー以外の誰も真が作り笑いをしているなどとはわからないだろう。

 

「良かった。みんなでお祝いに行こうって話してたんだよ!お店貸し切りにしてあるんだ!」

  無邪気に返すスタッフに、真は再びどことなく笑えていない笑顔でさも驚き喜んでいるかのように見せていた。

 

 

 

 

「ねぇ、真…莉央ちゃんは、よかったの?」

 

  メンバーを含む数人でお祝いしてくれている店内の大部屋で、隆は真に尋ねた。

「…よくないよ」

「じゃあなんで莉央ちゃん優先しなかったの、」

 そう言いつつも、隆の表情は怒っている様子ではなかった。同じ立場として、わかってはいるのだ。

 支えてくれる人と同じくらい…いや現実的に言ってしまえばそれ以上、仕事は大切で。この人たちが協力してくれているから、自分達はこの世界で輝いていられる。この好意は、プライベートな事情なんかで無駄にしてはいけない。

 

「…優先せぇへんわけ、ないやん。」

 

 咄嗟に出た本音だった。誰もそんなこと、言うてへんやろ…と、付け足すように呟く。

そんな真に、隆は「真らしいね、」と返し、少し酒が回って紅潮した頬を緩ませた。

 

 

*                          *                         *

 

 

「真、じゃあなー」

「誕生日おめでとー!」

「おめでとーう」

「また次あった時飲もうな!」

「って明日じゃんそれ」

「あははっ」

 

 

 

 賑やかなメンバーと別れ、真は帰路についた。

明日も仕事があるので、今日は早く寝なければならない。でも、その前に一目だけ、合っておきたい人物がいる。

 

 

  ほんの、ほんの少しだけ――。誕生日の最後に、会いたい人。

 

 

 

 

 

 少し緊張しつつ、インターホンを押す。

 マンションの廊下に立っているために、誰かに見られていないかと心配になって、帽子を深めに被りなおしてみたりして真はそわそわしていた。

 

「…真、?……な、んで……」

 出てきた莉央は、面食らったような顔をしていた。上着をはおってはいるものの、もう寝るつもりだったのだろう、部屋着に着替えていた。

「どうしても、やっぱり会わんと気がすまなくて……ごめんな、夜遅くに」

「うん、外寒いから…とりあえず、中入って」

 

  ―…

 

 

 

 あまり自分から、行くことのない莉央の家。

 本当は今日会うのは我慢しようと思っていた。次の日も仕事があるし、誕生日パーティーでつかれるのは目に見えている。

 というより本来の真なら、こんなことはまず考えられない。

 

 しかし、真は答えてしまったのだ。隆の質問に。

 

 「優先しないのではない」、と―――。

それはいわば、「莉央にも会いに行きたい」といっているようなものだった。なぜなら、隆はそういう意味合いで尋ねたのだから。

「莉央に会えなくていいわけない」と、自分が言ったのだ。やはり自分の誕生日なのだ、ましてや、一度しか来ない20歳の誕生日なのだ。自分がしたいことをしておきたい。

 

    ……一目でいい。少し顔を見るだけでもいい。

      特別な、自分のための一日の終わりには、君に会いたい。…会いたかった。

     

 

 

 

 

 

 

 コトン、と目の前にマグカップが置かれる。

 

「真樹かと思った……。今日真、仕事と誕生会あるって言ってたし」

「うん、さっきまでメンバーと一緒やってんけど……。ほんまにごめんな、いきなり」

「ううん、びっくりしただけだから。正直に言うと、会えてうれしいし。でも真…明日仕事あるんでしょ?だったら30分くらいで帰った方が…」

「なぁ、莉央」

「…何?」

  またもや真の仕事(あるいは体調というべきか)優先で考え始める莉央を遮って、莉央の名を呼ぶ。真っ直ぐな瞳を愛しく見つめ、真は微笑んで手招きをした。

「こっち来て、俺の隣座って?」

  しばらくきょとん、としていた莉央だが、真の意味するところをすぐに理解し小さく笑った。

「あは、うん、わかった」

 

 隣に座って、他愛のない話をする。

 別に誕生日のことを口に出すわけでもなく、いつもの、映画の新作が出そうだとか、仕事場でメンバーがこんなことをしていただとか、莉央のバイトでの話だとかを話し合う。

 そんなに特別なことではなかったけれど、真にはその時間があっという間のように感じた。そして、とてもその会話の一つ一つが貴重に思えた。

 

   ただ、隣で莉央が相槌を打ったり笑うたびに、莉央を愛しく想う気持ちは増していった。

 

 

 

―……

 

 

「…あ」

「何?」

「もう、こんな時間…」

   莉央の目線を追って時計を見ると、もう時刻は11時を回っていた。約束の30分は、もう10分ほど過ぎていた。

 

「ほな、帰るわ…。また、ゆっくり今度のオフにでも会おうな?」

  本当は名残惜しかったけれど、自分を叱咤して真は立ち上がった。

莉央がせっかく心から気遣ってくれているのは嬉しいし、事実本当に明日は早朝からなので早く家に帰って体を休めなければならなかった。

「うん、何だったら下まで見送ろうか」

「ええよ、玄関で。外寒いし、薄着やねんから風邪ひいたらあかんし」

 

 そう告げて、玄関に向かう。

しかし、玄関に着いたところで、ふと背後に感じられた莉央の気配が消えたのに気づき、真は振り返った。真の視界から、莉央は消えていた。

「…莉央?」

 名前を呼ぶのと、莉央がリビングへと続くドアから出てくるのとが同時だった。

かと思うと、莉央がどんどん真の方へ早足で近づいてくる。

 

「…!?」

 

 莉央特有の、ラベンダーの香りがふわっと真の鼻腔をくすぐった。と同時に、首周りに冷たい感触を覚えた。

何が起きたのか状況が把握できないまま、混乱している頭を必死に落ち着かせながら首元の冷たさの正体に触れてみる。どうやら、それはアクセサリーのようだった。

 最初はチェーンのようなものかと思ったが、すぐにそれがネックレスだということに気がついた。

 

「真が気に入るかわかんなかったんだけど。私の行きつけの男物のアクセサリーショップがあってさ。そこの店長さんに頼んで作ってもらったんだ、特別に」

 

  結構個人的には気に入ってるんだ、とまるで自分がもらったかのように嬉しそうに話す。莉央が言うだけあって、それはセンスもよく完成度のかなり高いネックレスだった。

 それほどごついデザインでもなく、かといって女物のような華奢すぎるデザインでもない。ちょうど自分の首周りよりも少しチェーンを長くしてあって、その中央には小さな南京錠と鍵をかたどったものとシルバーの細めのプレートタグがさがっている。

 キラ、と部屋の照明の光を反射したそのプレートを指でひっくり返してみると、裏には

 

S.A 

 20th Birthday  

1988.11.26

 

 という文字が施されてあった。

 

 

 ごく普通のデザインかもしれないが、よく見ると細かい模様などがアクセサリーに彫られていて…一言で表すならば個性的、だ。莉央は真が気に入るか自信のなさそうに言っていたが、驚くほど真の好みに合っている。

  嬉しさやら、感動やら驚きやらが混じって、真はしばらくどう反応していいのかわからなかった。

 

 

「…真、やっぱ違う方がよかったかな。…ごめん」

 真が気に入っていないと勘違いしたのか、莉央の少し申し訳なさそうな声で真は我に返った。

「や、あの…違うねん、なんていうか、めっちゃ嬉しすぎて、なんていうたらわからへんくて…おおきに!めっちゃくちゃかっこええ!!…毎日つけてもええくらいやで?」

 照れながらも、率直に感想を述べ莉央を安心させるように笑いかけた。それを見て、莉央もやっと柔らかい安堵の表情を見せた。

 

 

「よかった。誕生日おめでとう、真」

  柔和な、出会ったときから変わらない凛とした顔で、莉央が微笑んだ。

その表情に胸の奥が高鳴り、湧き溢れるような感情が真の中に生まれて、自然と彼を突き動かしていた。

 

  ほんの、一瞬だけ。

莉央が、突如近づいた真の顔に驚いてぎゅ、と目を瞑ったのが、近距離で真の視界にうつった。

 

 

 

「………っ、」

 

 

 

 ほんの少し掠れる程度のそれをするとすぐに離れて瞳を開くと、莉央がわずかに見開かれた目で真の顔を呆然と見詰めていた。

 笑みが消え、無表情な彼女に、不安がこみ上げる。

 

「……もう少し反応してくれてもええんちゃう?それとも、いややった?」

  莉央の目を真っ直ぐ見て尋ねる。はっと我に返ったかのように、莉央が慌てて否定し横に首を振った。

 

「いや、今まで自分にはこういうの一生ないって思ってたから……。なんか、信じられなくて。

  でも素直に嬉しい。――……最初が真で、よかった」

 

 

     莉央のその言葉に、真はいまさらながら恥ずかしくなり赤面した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     最高の、誕生日プレゼント、おおきに。

 

        これからも、よろしくな。

 

   少しだけ大人になった二人で、これからもできる限り、一緒の時間を過ごしていけるとええな。

 

 

 

             いや、きっと。

 

  莉央とやったら、明日も明後日も、笑いあっていける気がする―――…。

 

 

 

 

 

 

*                         *                           *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わったあ!…時間かかってごめんなさい、期末があって…(もはや言い訳

 

この二人はとてもとてもゆったりと進んでいきます。だからこそ、確実な信頼ができているのかも・・・?

どこまでも純粋で、また隆とは違った2人のその後の恋愛模様、ほんの一部ですがいかがでしたでしょうか。

 

皆様の心に何かしらの印象を残してくれたのであれば、そして願わくはそれが暖かい癒しとなるようなものであれば、幸いです。

 

 

では、またお会いしましょう!よい夢を。

 

 

蒼海聖奈

 

 

 

 

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「真ー!21歳おめでとー!」

「おおきに!」

   早朝の撮影スタジオの廊下で、すでに来ていた美紗子に挨拶され真はにこやかに答える。

 

そう、今日は、真の誕生日。

 

 

そしてこれから話すお話は、ちょうど今日から一年前の、まだ20歳の誕生日の頃の話―。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「お疲れ様でしたー」」

  夕方ごろ、無事に今日最後の仕事である2人での雑誌の取材を終えた隆と真は、2人ともこれといった用事がないため一緒に夕飯を食べようということになった。

 普段はそれぞれお気に入りの店があるのだが、今日は新しい店を探そうということになり、隆は車を持っていないので真の車に乗ってお店探し。

 夕飯を食べる店をあーでもない、こーでもないと探しながら、話は今日O.A.のドラマのことへと移る。

 

「そういや今日O.A.だよね?ドラマ。」

「うん、今日。…まあ今回は俺あんまり出てへんけど。」

「ああ、今回は確か日多と美紗子が主役なんだよね」

「そうそう。まあでも、どんな役でも一生懸命演じさせてもらうことには変わりないけどな」

  これは一種の真のポリシーとでもいうのだろうか。本業は確かに歌手だが、同時にメンバーの中では演技派といわれていて多々その方面の仕事も経験している真は、無意識にそんな言葉が出てきてしまう。

 

「ははっ、真かっこいいね!さっすが♪」

  それを聞いた隆がまるでからかうように口角をあげて笑った。

そんな隆を冷ややかな目で見て軽く受け流し、真は反撃とばかりに隆に尋ねた。

「そういや奈々ちゃんはドラマのことどういってるん?隆、恋人がいる役多いし色々複雑なんちゃう?」

「ん?それはないよ。ちゃーんと奈々のこと愛してるって態度で示してるもん」

  反撃したつもりだったが、どうやら隆には効かないらしい。それにしても、「愛してる」とか恥ずかしいことをさらりと言える隆はやはりアメリカ人並みのセンスを持ち合わせているとしか思えない。

 相槌を返す気にもなれず、真がだまりこくっていると、どうやらそれを恥ずかしがっていると誤解したのか隆は悪だくみを思いついたような、先ほどとは違う笑顔になった。

 

「…真は?莉央ちゃん不安にさせないようにキ…」

「あ――――――!!!!!」

  隆が言おうとしていることを察してしまった真は、とっさに大声をあげてその声をかき消した。

我ながら幼稚な対処だと思ったが、それ以外に思いつかなかったのだ。

動揺したために、危うく急ブレーキを踏みそうになった。なんとか寸前でその事態は避けたものの、完全に勢いを止めることはできず、キキ、とタイヤがわずかに悲鳴をあげた。

 隣に座っていた隆が反動で前のめりになり、「うおっ」と声をあげる。

 

 しかしそれは一瞬の出来事で(幸いそれほど混んでいなかったので車間距離は十分あった)、つい先ほどまでのスピードに戻ると、助手席の隆がにやにや笑いながらそれでも抗議してきた。

「ちょっと危ないよ、真」

「なっ隆が変なこと言おうとするからやろ!?」

「えー、別に変なこと言ってないよ?何勘違いしちゃってんのかな、与果くん?」

 そういいながらも真の反応をあからさまに面白がっているようで、にやにや顔は消えない。


「そんなに照れなくても、いつも雑誌でのトークは平然としてるじゃん」

「俺がいつ莉央のこと雑誌のインタビューで話した?」

  少々冷たく言い放ったが、隆は動じる様子もなく、あー、それは話したことないね、と笑った。

「でも、妄想トークとかがテーマの時は普通に言うじゃん」

「…………。…そ、れは…妄想だからやん」

 

 そう。それは、空想の話だから―。

現実であったなら、とても雑誌のインタビューだろうと言えたものじゃない。

 

「……。…え、真?」

「何?」

「今の間は何?まさか、深い意味とかないよね?」

 車内に、嫌な沈黙が流れた。いつもとは違う空気になる。

   ああ、これだから、恋愛の話は苦手なのだ。

 大体、こういうときに限っていつもは鈍感な隆のカンは鋭い。

悪くいえば、本当にKYというかなんというか、さすがA2Cの「AB」担当といったところだ。

 

 さらに、もう話を逸らしてしまいたいこっちの気持ちなどおかまいなしに天然KYトークは続く。

 

「…え、そのまさか?真と莉央ちゃんって付き合って7ヶ月以上は経ってるよね?結構な割合で会ってるよね?それで、まだ、キ…」

「あー、もうそれ以上は言わなくてええから!」

 いい加減に人の気持ちを察してほしい。隆が一番、真が究極のシャイボーイであることを知っているはずなのに。

 話題が莉央とのことになった途端に、真の顔は紅潮しっぱなしだった。

「…どっかの誰かさんとは違って、ゆっくりめな恋やねん」

「いや、ゆっくりすぎでしょ。」

 精一杯冷静を装って返した言葉(正しくは言い訳)は、あっさりと隆の即答のツッコミによって却下されてしまった。

 気がつけば、さっきから同じところをぐるぐると回っている。しかし、助手席に座る隆はもうそんなことには全く気付いていないようだ。

 

「…シャイボーイにも程があるなぁ」

  しばらくの間があって、窓の外に視線をやった隆は苦笑しながらそう呟いた。

 

 

 

 真は、あえて何も言わなかった。

隆が半分言ったことは、半分合っていて、しかし半分間違っていた。

 

 確かに、照れでタイミングがつかめない、というのもある。

抱きしめることはできても、それ以上に莉央に近付くことはできない。

 自分の羞恥心が邪魔をする、というのもあるし、第一莉央と真の間でそういった空気になることなどまず無かった。

 

   しかし、それだけであれば、苦労はしない。

莉央に恋愛経験がないことは知っている。彼女いわく、「男とは男友達としてしか接したことがない」そうだ。

 つまり、莉央にとっては真が初めての恋であり、初めて付きあった異性、ということになる。

 

それは、真にとっては嬉しい事実でもあり。

――同時に、一種のプレッシャーでもあった。

 

 

 

 

 

 

   ―だって、な…莉央にとっては…。

  

…………あかん。考えんのやめとこ。

 

 

 

 

「…ハグするのが精一杯なんやもん」

「…え、何?真なんか言った?」

  はた、と傍で聞こえた声に、我に戻った真はあれから時間がたち、今日は莉央が家に来ているのだということを思い出し、慌てて赤くなった顔をそむけて隠した。

「な、何も言うてへんよ」

「?…空耳かな」

  不思議そうな顔をしながらも、すぐにその表情はいつものクールなものへと変わり、莉央は手元の雑誌に視線を戻していた。

 どうやら音楽雑誌らしい。真の部屋にあったもののようだ。

たまたま、この間気に入った雑誌を買ったら自分も載っていたもので、さっきから莉央が読んでいるのは自分が載っているページだ。

 雑誌の中の、「A2Cの」自分と目が合って、真は奇妙な心持がした。

 莉央の視線は、依然として紙面にちまちまと並んでいる文字の羅列を追っている。

 

そういえば、今日は莉央が家にきてからずっとこの状態だったような気がする。

 珍しく考え込んでいたものだから自分でも全く気付かなかったが、莉央が隣にいる、という安心感から特に何も気にせず考えに耽っていたのだ。

 

 本当に、真と莉央は恋人らしいことを何一つしていない。

 

そりゃあデートと一応呼べるであろう外出は幾度かしている。

 しかし、最近では真の仕事のせいもあって家で会うことがほとんどになり、家に来ても何をするわけでもなくただこうして思い思いにくつろぐくらいだ。

 

 やはり、隆の言うようにどうにも莉央との恋は「ゆっくりすぎ」ているのかもしれない。

 

 

 

「…莉央?」

「…ん?」

 真が不意に隣の莉央を呼ぶと、莉央は真が話をしたいことがわかったのか雑誌を閉じて真の方へ顔を向けた。

 やっと今日まともに顔を見たような気がする。

何か話そうと試みたのだが、先ほどまでひとつのことでいっぱいになっていた頭からはたいして話の続きそうな話題は出てこなかった。

「いや…やっぱ何でもない」

「……真?なんか、あった?」

 莉央の表情が心配そうなそれになる。真のことを心配するのは彼女の癖、といってもいい。

少しでも真が考え込んでいたり何か悩みを抱えているようだと、莉央は「なんかあった?」と聞いてくる。

 しかし、いつもはただ嬉しいだけなのだが今日はその表情すら真の鼓動を速めている気がして、自分らしくない、と自分に叱咤した。

 

「や、ほんまに何もないから。大丈夫やで?」

「そう?なら、いいんだけどさ」

  微笑んだ彼女に真は目を細め、無意識のうちに莉央の少し長めの髪に手をのばしていた。

髪を撫でながら、莉央の目を見つめる真に、莉央も真から目をそらさずに不思議そうな表情を浮かべた。

 

さっきとは違う空気が、その空間に流れていた。

 

 

 とくんっ。とくんっ。とくん…

「♪」

 

「…あ、私だ…ごめん」

 (少なくとも真にとっては)緊迫していた空気は、莉央の携帯の着信を知らせる音によって壊されてしまった。機械に空気を読むことはできるはずがないので、怒ろうにも怒ることができない。

 これが真の携帯で相手が隆ならば、存分に怒ることができるのだが。

 

 今だに鳴っている携帯電話を片手に、莉央は一瞬動作を止めた。かと思うと、顔を真の方へ向けて尋ねてくる。

「…ちょっと電話してもいいかな?真樹からなんだけど」

「…え?あ、うん。別にええよ。…あ、でも!」

「?」

「そんなに、長電話せんといてな…?」

「うん、ありがとう。」

   真の頼みを、ふ、と莉央は微笑んで承諾した。そんな莉央に真は愛しく思いながら微笑み返す。

 莉央が向こうで電話をしている間、真は先ほどまで莉央が呼んでいた雑誌を手にとり自分のページを開いていた。

 

 雑誌を読んでいて、ふと真はこの雑誌の取材の時に、来月では遅くなるからと担当者に誕生日プレゼントをもらったのを思い出した。

 確か、アロマセットとかだったと思う。ありがたくもらったのを覚えている。

 

―もうすぐ、俺の誕生日やな……。

 

 真の誕生日は11月26日。同メンバーの直哉と同じ月だ。

毎年誕生日はそれなりに楽しみにしているものの、今回は特別だった。

 今年の誕生日で真は20歳、成人になる。

莉央は5月生まれなのでもう20歳なのだが、やっとこれで二人とも同じ20歳となるのだ。

 

  しかし、真はこの特別な誕生日を心から喜ぶことができないでいた。

 

 誕生日の日、真は初め莉央と一緒に過ごしたいと考えていた。

実を言うと、莉央の誕生日は仕事でどうしても会えなかった。

 それなのに自分の誕生日には一緒にいてほしい、なんてもしかしたら単なるわがままなのかもしれない。

 

だからだろうか、真の誕生日が来る前に、ある問題が生じてしまった。

 もともと、真の誕生日は9時までは仕事が入っていたのだが、そのあとどうやらスタッフさんがサプライズ誕生日をやってくれるらしいのだ。

サプライズなのになぜ真が知っているのかという話だが、偶然知ってしまったのだから仕方がない。

  真は、自分の誕生日はできることならば莉央と過ごしたい、と考えていた。

しかし、スタッフの好意はむげにできるものではない。

第一に真のプライベートな事情など知るはずもないスタッフの今回の提案に悪意は全くないわけで、それは純粋に自分のために時間を割いてしてくれることなのだ。

 きっともう計画は着々と進んでいることだろう。いまさら本人が「いけません」なんて言えるわけがない。仕事がそのあとないことをスタッフはきっと把握している上での計画だろうし、毎年スタッフとメンバーで祝ってくれていたのだから、いってみれば真が参加できるのは当たり前のこととなっているのだ。

 

 真だって、どこかの誰かさんほど彼女依存症ではない。

他の人の好意を、しかもお世話になっている人たちの好意を台無しにするなどということは、たとえ自分の時間が犠牲になろうと立場上するべきでないということは本人が十分わかっていた。

 

 

  莉央とは、一緒に過ごしたい。

 しかし、断るわけにはいかない…。

 

 

「でも20歳の誕生日なんか二度と来ぉへんし…うーん…」

 

 

 

******************・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

To be cont. to vol.2

 

 

 

 

すいません続きます!あまりにも長たらしくて一回じゃあおさまりきらない…(は

 

うわわすごいところで切れちゃってる;;

 

 

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2008.10.03 01:41 | Story2 私と君と、等身大の恋心。 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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